月が綺麗ですね

「血の繋がった父親より、よっぽど父親らしいと思わない?本当なら私のことを憎んだっていいのに」


徹さんは、そういう人なんだよ。
だからいがちゃんを憎むなんて絶対しないんだよ。


「でもさ...血が繋がってるって言ったって、片方だけじゃない?やっぱり好きになっちゃうんだよね」


遠くを見つめるようにいがちゃんは言った。


「片親しか血が繋がってないのに、結婚出来ないって酷くない?」


えっ、そんなこと言われても...。

でも徹さんは素敵な人だから、その気持ちは分からないでもないけれど。


「一年近く彼女のいなかった徹に彼女が出来たって聞いた時、正直ムカついたし、嫉妬した。おまけにその彼女が風花だって言うんだもの。いじめてやるしかないって思った」


いがちゃんは握った拳に力を込めた。それは決意を秘めていたようだった。


「...徹を取られたく無かった。私だけの徹でいて欲しかった。他の女を見ないで欲しかった。それなのに、徹は風花に夢中で結婚したいとまで私に言うんだから。人の気も知らないでさ。私から徹を奪った風花を許さないって思った」


...それが本心だったんだね。


「あははっ...」声を上げていがちゃんは笑った。


「こんな美人と同居しててさ、この私がいくら迫っても徹はガンとして受けつけなかった。信じられないでしょ?」


...だって兄妹でしょ?


「風花を絶対にマンションに呼ぶなって言ったの。だってそこは私と徹だけの空間なんだもの。もし呼んだら、私死んでやるって脅したのよ」


それで...徹さんは私を彼の自宅に呼ばなかったんだ。


「ねぇ、新ブランドの立ち上げの話は?」

「真っ赤な嘘よ」

「う...そ?」

「でも徹の部屋でよくお酒は飲むわ。彼が仕事をしていて、私が徹のベッドに座りながらね」


ベッドの上って...そう言うことだったの。


「あんた達を振り回したのは...この私ってわけ。それを懺悔しにここへ来たのよ」