月が綺麗ですね

「ふぅ...」いがちゃんは興奮を抑えるように息を吐き出した。


「認知はしないけれど金銭面は不自由させないって、あのくそ親父は言ったらしくてさ」

「...うん」

「なに、風花がしんみりしてるのよ。私は気にしてないから」


それが本心じゃないことくらい、私には分かる。


「だから当然、六ツ島家への出入りは禁止されてたんだけど、徹が中学生の時に偶然私の存在を知って、それ以来私のことを気にかけてくれてた。色々相談にも乗ってもらってたし、面倒も見てくれていたのよ」


やっぱり徹さんって優しいんだ。だっていがちゃんに罪はないもの。


「で私が14歳の時に追いやられるようにスイスの寄宿学校に入れられて、大学時代はアメリカに移って。まるで日本に帰って来るなって言われてるみたいだった。その間もずっと徹は私のこと気にかけてくれてた」

「...そうだったの」

「でもさ、やっぱり生まれが生まれだから、色々グレちゃったりしてさ。徹に怒られたことだって何度もあるし。私が大学を卒業できたのも徹のお陰。大学を卒業して定職につかないでいた私に声をかけてくれたのも徹」

「あっ!」


私は得心したように、声を上げた。


「分かった?徹の親が突然ハワイに移住したでしょ?」

「うん」

「私のことを嫌っていた両親が日本からいなくなって、一族の反対を押し切って私を会社に呼び寄せたってわけ。六ツ島一族の愛人の子はそれなりの数いるけれど、会社に入れるなんて前代未聞だったみたい。連中は愛人を作っておきながら、その子供は恥とでも思っているのよ。ほとんどの子供が私と同じ境遇だと思う」


...最低。
それで徹さんが愛人を嫌うのも理解できた。



「で、ついでに徹のマンションに転がり込んだのよ」


徹さんがいがちゃんの面倒見てたんだね。