月が綺麗ですね

「私と徹しか知らないことをたくさん風花に吹き込んだ、わざとね。それで風花は私と徹の関係に疑念を抱いたし、兄妹とは思わなかった。むしろ恋人同士で二股をかけられていると思い込んだ」

「うん。思いっきり」

「素直な風花はまんまと私の策に引っかかった。クク...おかしい」


...って、笑いごとじゃないと思うけど。私はギュっと拳を握った。


「ねぇ、徹は何度も風花に『香奈は妹だ』って言ったらしいじゃない。私と徹の関係は秘密だったし、六ツ島一族からも口止めされていたのよ」


確かに、言った。...何度も。

「だから、風花みたいな一般社員に秘密をばらすことは規約違反なのだけど。それでも徹は風花に話した。まったく規約違反まで冒して私と風花どっちが大切なのよっ」


...兄妹であることを話すのが規約違反?

うちの会社の闇を感じてしまう瞬間だった。


「徹はそこまでしたのに風花は信じなかった。だから、誤解したままここへ帰って来た」

「うん、その通りだよ。名前が違う、でも住所は一緒だから同棲してると思ってた」

「まぁ、徹の説明不足も悪かったんでしょうけど。ちゃんと私が彼の妹である理由を説明しなかったから。でもそれは徹の優しさだったと思うんだよね。私の過去を言いたくなかったのかも」

「妹である理由?」


いがちゃんの次の言葉は私の質問を無視したものだった。


「風花は徹を信じないくせに別れないし、徹は風花を諦めきれない。二人を別れさせようと思って私、色々頑張ったのに。今まではそれで徹と彼女を別れさせられたんだけどなぁ。あんた達はダメだった」


今までって...いがちゃんそんなことしてたの?徹さんの元カノにそんなことをしてきたと言うの?

本気で徹さんが好きだったの?

兄妹なのに?



「今回は私の負けよ」

「負けって...根本的に何かおかしいと思うけど」

「ねぇ、徹を最低な男って思ったでしょ?どうして別れを切り出さなかったのよ?」

「それは.....」


桜の花びらって、どうしてこんなに綺麗で儚いんだろう。


「好きだからだよ」