月が綺麗ですね

ドクドクと忙しく心臓が騒がしくて、息が苦しい。

動揺が半端ない。初夏には全然早いのに、背中にはじっとりと汗をかいている。

でも、何を言われても泣かないようにしなくちゃ。


いがちゃんは笑いながらこちらに戻って来ると、さっきと同じように縁側に座る。


「徹が...兄貴が心配してるからここに来たに決まってるじゃない。いくら風花のスマホに連絡を入れても出ないって。でさ、この私が菱倉くんに頭を下げて、風花の居場所を教えてもらって、わざわざ会いに来たのよ」


わざわざ会いに来た?どこまでも上目線だな。

だけど...。


「...兄貴?」

「そうよ。知ってるんでしょ。私と徹の関係」



しばらく私は言葉を失っていた。

兄貴...。

本当だったの?いがちゃんは徹さんの妹だってこと。それとも私を騙しに来たの?

だって名前が違うじゃない。


「恋人同士だとばかり思ってた」

「でしょうね」


彼女は声を上げて笑いだす。


「やっぱりそう思ってたんだ。まあそう仕向けたのは私だけど」

「へっ!?」


驚きを隠せず間抜けな声を上げてしまった。

脈拍が上昇する。いがちゃんの言葉に落ち着いてなどいられない。