月が綺麗ですね

「──進藤さん、お掃除は終わったの?」


飯塚さんがいつまでも秘書室に帰らない私を見に来たようだ。


「...は、はい」


私は慌てて涙を手の甲でぬぐう。


「いつまでたっても秘書室に戻って来ないから。ここで何してたのよ?」


彼女の声は少しイライラしている。



「副社長が風邪をひかれてお休みなんだから、今日の予定のキャンセルしなきゃならないでしょ!」



飯塚さんには連絡あったんだ。

二股がばれたんだもの、私を無視するのは当然か。ってことは、本命はやっぱりいがちゃんってことだよね。




「あら?進藤さんには連絡来てないの?」

「はい、さっき他の人から聞きました」

「あら~、そうだったの。でも他の人って誰かしら?まあいいわ」


飯塚さんはどこか嬉しそうだ。