月が綺麗ですね

「...風花」

水面が二人しかいない空間に、何かを訴えるかのようにポチャンと音をたてる。それがどうにも、熱く淫靡な世界の音に感じられて胸がキュンとなる。

徹さんは背が高いから水面から完全に顔を出して瞼を閉じている。

彼も私と同じ気持ちなのかな?その体からも熱い体温が伝わってくる。


水は静かに私たちの体にまとわりつくみたいにただ揺れている。


「...あの、いつまでもこうしてても仕方ないですよね。それに重いでしょう?」

「浮力があるだろう」


そうだった...。
私ったら、いったい何を言ってるんだろう。

でも...。


「徹さん、いい加減離して下さい」

「ダメだ。ずっとこうしていたい」


徹さん...。


彼の少しだけ荒い呼吸と水音がさっきから耳元を刺激してくる。

このまま溶けてしまいたい。

二人で何もかも忘れて水の世界に漂っていたい。



そうしたら恐怖や痛みを感じないで、愛し合っていられるのに...。