月が綺麗ですね

「行くぞ」

短く言って役員専用駐車場へと降りる。


「どうした?元気がないな?」


そりゃそうでしょ。

そんな質問するなんて、女心が分かってないの?


徹さんはふっと口元を緩めて小さく笑う。

「何も心配することはない」


その言葉の意味を理解して胸がキュンとなった。


指をからめてくる。

さっきから体が熱い。

小指が触れた瞬間、体温はさらに上昇したと思う。


地下駐車場には徹さんの車しか残っていなかった。

ガランとした広い空間なのに、やっぱり息苦しい。徹さんと並んで歩いてる時から苦しさは増している。



「そんなに震えるな。別にお前を取って食おうと言ってるわけじゃない」


...食おうとしてるじゃない。

言おうと思ったけれどやめた。


車の前まで来ると、いつものように助手席のドアを開けてくれる。

そして車は出入口の鉄板を”ガタン”と派手な音をさせながら駐車場を出ると、不安で押しつぶされそうな私を乗せて、ホテルへと走りだしたのだった。