月が綺麗ですね

「ホテルの予約はもう取ってある」


徹さん!?

彼の決意を証明するようなその言葉に驚き、無言で徹さんを見つめた。


視線がぶつかり、それをあえて外すように徹さんはうつむくとためらいがちに、

「風花が嫌ならキャンセルするが...」

そう言った。


キャンセル...。



ふと、いがちゃんとの会話が呼び起こされた。


『私も副社長好きよ。もしかしたら風花以上にね』


ドクドクとさっきから心臓がイヤな音をたてている。

ここで決心しなければ、徹さんは私から離れてしまうかな?


もし、いがちゃんが積極的にアピールしてきたら...彼の心は変わってしまうかも知れない。


私は徹さんに背を向けると、

「行き...ます」


そう答えたのだった。