月が綺麗ですね

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「ほら、あの黒いスーツの人。確か副社長の秘書だよ」

「秘書ってカッコ良くない?私も秘書室に配属されたいよぉ」

「綺麗じゃないと駄目でしょ」

「あ~ん、美人に産んでくれなかった親を怨むぅ」



どうやら新人さんが私の噂話をしている。

私、言うほど綺麗じゃないけどね。内心で肩をすくめる。


「こんにちは」


それでも私は二人に声を掛けた。

これも私の大切な仕事。徹さんが秘書室=大奥のダーティーなイメージを払拭して、開かれた秘書室にしたいと先日の重役会議で提案し、ただいまその計画の実行中。


「こ、こんにちは」


二人は顔を染めて私に挨拶を返してくれた。

うふふ、可愛いなぁ。私にもあんな時代があったなんて嘘みたい。

先輩と話しをするだけで緊張してたっけ。

今ではそんな私が先輩か...。