月が綺麗ですね

「ねぇ、その指輪副社長からもらったんでしょ?センスいいわよね」

「違っ...。っていがちゃん、ちょっと待って」


私は紙ナプキンで口を拭きながら呼吸を整える。

落ち着け風花、落ち着くんだっ。

いがちゃんは推測でものを言っているはず。徹さんと私の関係は知っているはずもないし、社内の噂なんかを元に彼女なりに推し量って聞いているんだ。そう思って気を取り直す。


「私さぁ、自分から進んで販売の職を希望して、それでエリアマネージャーになったんだけど、出会いが全然ないわけ。だから本社勤務の風花とか同期の女子が羨ましいんだよね」

「いがちゃんは美人だから、あちこちからお声がかかるでしょ?」

「そうねぇ、声はかかるけどみんなタイプじゃないし興味が湧かないわ」

「嘘...。理想が高いんじゃないの?」

「う~ん、それはあるかな」

「どんな人がタイプなの?」

「私帰国子女でしょ。だから相手にも最低限の英語が話せて欲しいし、男勝りの性格でも受け止めてくれて、仕事もバリバリ出来る人...そうねこの会社だったら副社長が一番理想に合うかな」


そ、そ、そうなんだ。


「ん?風花どうしたの急にうつむいて?」

「いや、別に...」


やっぱり徹さんって人気者なんだ。