秘書室が大奥と言われる所以が分かった気がする。

まさに江戸時代の大奥じゃない。殿様に声をかけられるように女性たちはライバルをけん制しつつ、切磋琢磨する。


ああ、それで私が初めて秘書室に来た時の慇懃な歓迎の理由が分かった。

どんな時でも気を抜かないで、いい女を演じる。

さもないと、誰かに告げ口されてしまうから。


...疲れる。


私は妙な脱力感に襲われ、大きくため息をついた。


「普通はここに呼ばれたら、どの子も玉の輿に乗ろうと頑張るのだけれど、あなたはそうでもないみたいね?」

「考えただけでも、ゾッとします。営業三課は和気あいあいとして楽しかったし、変に気を使う事もありませんでしたから。それに...」


私は天井を見上げた。

シャンデリアとまでは言わないけれど、キラキラと光りを放つライトがぶら下がっている。


光を放つものがひとつだから、それは目立つし価値がある。

自分で言うのもなんだけれど、だからこそ私は営業三課で輝いていた。



美女もたくさん集まればしょせんドングリと変わらない。

そんな中で私は自分の価値を見出せるのだろうか?

お妃になるのが目的では仕事だって楽しくないはずだ。