「理由はどうあれ、進藤さんも候補になったのよ」


三浦さんは笑う。


「今まで副社長の秘書は飯塚さんが二年間一人で努めてきたから、秘書室でも彼女が副社長のお妃候補ナンバーワンで間違いないって言われていたの。ところが、突然の進藤さんの登場。相当彼女も焦っていると思うわよ」

「そんな...」


いきなりお妃候補って言われてもピンと来ない。
それに、私は副社長をはじめ、重役さんたちとも面識はない。

社内報で顔写真を見たのがせいぜいだ。


「合理的なシステムではあるわよね。秘書として近くに置いて、お妃として相応しいかをチェックするようなものだから」

「...はぁ」


それって品評会みたいじゃないですか。

私たちを物産展の品物とでも思っているのかな。

思っては見たものの、口に出すことはさすがに控えた。だって、それはここにいる秘書の皆さんを小バカにしてしまうことにもなりかねない。

加えて自分も秘書になるのだから、自分の価値を落とすことにもなってしまう。

営業三課でもそれなりに認められるように仕事をしてきたつもりだ。だからここでもそうなるように仕事をしたいとは思っているけれど...どうも仕事を頑張る目的が違うみたい。