夜の9時を回った頃。

私はオフィスから少し離れた街灯の下に立っていた。

目の前を歩く人に無意識に視線を向ける。急いで帰路につくサラリーマン、ほろ酔いのOLさんに肩を寄せ合い歩くカップル。

人波すらも街の一部のように見える。それが無かったらきっと味気ない街に見えるだろう。

都会の夜は活気があって好き。特に不夜城のようなこの街は。

星の光も届かないくらい派手なネオンは疲れた心を無理矢理元気にしてくれるし、雑踏に紛れれば、私も街の一部になれるから。



私の出身は東北宮城。

一番の繁華街、仙台市国分町ですらこれには敵わない。

大学進学のために東京に出てきて早10年。都会での生活にも慣れた。黙っていれば東京出身と言っても誰も疑いを持たないはず。


都会の喧騒を嫌う人もいるけれど、私はそれとは反対の感情を持っている。

エネルギーに溢れ、ちっぽけな存在の私ですら何かが出来るような気がするのは大袈裟かな?