月が綺麗ですね

「秘書室が大奥と言われる本当の理由、知ってる?」

「...いいえ」

「社内での噂は?」

「はい。まあ何となく、それくらいは知っています」


会長や社長の愛人。


「重役の愛人ってとこかしら?」


三浦さんは一度言葉を切った。


や、やっぱり...。

ゴクリと唾を吞んで、私は次の言葉を待った。手にはジワリと不快な汗がにじんでいる。


私の反応を愉しむように少し間を置いてから、三浦さんはゆっくりと口を開いた。


「ここには六ツ島一族の花嫁候補が集められているの」

「はっ!?」


花嫁候補...。


愛人と言うセリフでは無かったにせよ、驚いたことに変わりはない。



「つまり、進藤さんも花嫁候補に選ばれたのよ」


それは喜ぶべきことなのだろうか?

いや...そんなことより。



「まさか、私がどうして...」


どう考えても私が選ばれるわけないと思う。

ここにいる秘書の皆さんはとびっきりの美人だし、話した感じで頭も切れそうな気がする。けれど、私はそこまでの容姿ではないし、頭だっていいわけじゃない。