月が綺麗ですね

「今まで私が一人で出来たものを、二人で分担するなんてかえってややこしくなるだけなのだけれど...」

ため息交じりに飯塚さんは私を見ると、パソコンで作ったらしい分担表と引き継ぎ書を渡してくれる。

私は、副社長のスケジュール管理に電話、メール、来客の対応。それに雑務と書かれている。

飯塚さんは情報管理に接待、出張の同行。と書かれていた。


「あなたがミスればそれは私の責任なの。くれぐれも失敗のないようお願いね」

鋭い視線を向けられる。

つまり飯塚さんの評価が下がってしまうってことですよね。


「はい」私は短く答えた。



細かく指示をされた後、最後に驚くべき言葉を彼女は吐き出した。



「あなたなんかに、絶対負けないから」

「えっ!?」


驚いて飯塚さんを見上げる私を無視して彼女は会議室を後にした。


「どう言う意味?」


独り言のように呟きキョトンとする私に、三浦さんが笑いながら理由を説明してくれた。