えっ!?


それは一瞬だった。

ゴトンと彼の手のひらからグラスがこぼれ落ち、床へと転がる。


私はローチェストに座る彼の長い足の間に引き込まれ、更に頭に手を回され彼を見下ろす格好になっていた。


私を見上げる眼鏡の向こうには鋭さを失った、むしろ吸い寄せられるような甘い瞳が揺れていた。


頬は上気し心臓はドクンドクンと信じられないくらい激しく鳴っている。


「嫌なら拒否して構わない」


水で濡れた唇がゆっくりと言葉をつむいだかと思うと、私の後頭部に回された大きな手にグッと力が込められる。


彼の浅い呼吸からはほんのりとアルコールの香りがした。


お互いの顔がゆっくりと近づくに従って熱を感じ、私はそっと瞼を閉じたのだった。