幸子が机に伏せていると、いきなりピンポンパンポンと鳴った。
「命に関わる大切な放送なので、しっかり聞いてください。
たった今、佐野原市の駅前広場にて、大規模な爆発が起きました。敵軍からの第三次世界大戦の幕開けの合図です。本校の生徒は直ちに静かに席につき、絶対に校舎外に出ないようにしてください。決して、パニックにならないように。」
淡々と話す教頭先生の声の裏側で、何人かの女教師がヒステリックを起こして悲鳴をあげているのが聞こえた。
一気に教室がザワザワとした声で溢れた。
「戦争?」「爆発?やばくね?」「え、まじ?」
そんなザワザワ声をかき消すように、ドアが思いっきりバタンと音を立てて開いた。
見事に、ざわめきはピタッと止まり、クラスメイト全員がドアの方を見て口を開けたまま固まっていた。時が止まってしまったかの如く。
幸子がドアの方を向くと、そこにはガスマスクを付けた表情の読めない兵隊が何人か、銃口をこちらに向けて立っていた。

まもなく、大きな銃声が教室中に響き渡った。
幸子の視界を真っ赤に染め、バタッと人間が1人倒れた。

あの時の、固まった表情のまま。