「はぁ...このまま溶けちゃうんじゃないかしら...?」
そう思うくらい、幸子は汗だくになり歩いていた。
汗を吸った服が、身体にまとわりついてきて気持ち悪い...。
すれ違う人々も、また幸子と同じように、汗を拭きながら、日傘を差しながら、水を飲みながら通り過ぎていった。
やっとの思いで電車に乗った幸子はふぅ...と息を吐いて、電車のフカフカな椅子に座った。
「変なの。朝だっていうのに、電車にあまり人がいないわ。
みんな暑くてやんなっちゃったのかしら...。」
不気味なくらい静かな電車の中に、ガタ...ゴト...という音が響き渡る。
ようやく目的の駅に停車した。ほんのちょっと...10分や15分くらいしかないはずなのに、幸子は馬鹿に長く感じた。
そしてまた、重だるいような足で電車を降り、駅から3分くらいの、自身の通う高校へと向かっていった。

相変わらずの真夏の日差しが、何も知らないような顔で彼女を照りつけた。