足元はあれやこれやいろんなものが落ちていて、とても歩きやすいとは言えなかった。
時々誰かが転びそうになり、ヒヤッとすることもしばしば。
不意に、幸子は胃が溶けそうなくらいの、強い空腹感を感じた。
無理もない。なのに貰ったチョコレート以来、何一つ食べてないのである。
「...お腹、すいたなぁ」
好物のハンバーグ、あの日の朝食べたトースト、あの時残した苦手なグリンピース。
色々なものが頭をぐるぐる回り、思考を蝕んだ。
しかし、ここにはそれどころか、パン一欠片も、米一粒もないのである。
「お腹すいたなぁ...」「うぅ、食べ物欲しい...」
考えていることは、皆同じだった。
「弱音を吐いている場合じゃないわ、歩きましょ。」
そう言っている姫華も、相当空腹だろう。
「...ちょっと!お腹空くのは仕方ないじゃん!」
「そんなこと言ったって、食べ物は出てこないわよ?」
「それはそうだけど!」
「ちょっと!喧嘩してる場合じゃないよ...」
美羽は、姫華と桃音を宥めるように言った。
「そうだよ...お腹すいているのは、皆同じ。
ちょっと我慢しないと...」
なのも、眉にしわを寄せて言った。