あ、あ、あ愛してる「君に伝えたい思いをこめて」

「和音、何かない?」

「そ、そそうだな~……」

俺は十数秒考えて、ヴァイオリンを手に取った。

エマが落ち込んでいた時、ピアノを弾きながらハミングしていた曲を弾いてみる。

イギリス民謡だという曲は、アーメイジングレイスに似ていた。

静かな落ち着いた響きの中に、しんみりとした優しさも侘しさもあり、心が和んだ。

悲しみを押し殺し、涙を堪えてハミングするエマのソプラノが「負けないわ」と叫んでいるようで、俺も「負けない、負けてたまるか」と思った。

「どこかで聞いたことがある曲だな」

「いいな。何かこう、胸に響く」

拓斗と奏汰の言葉に頷いて、俺は更に歌詞を練る。

もっと激しく感情をさらけ出し、もっと解りやすくと頭を抱える。