あ、あ、あ愛してる「君に伝えたい思いをこめて」

和音くんが何を考え、何を悩んでいるのか? 和音くんの涙の理由が何なのか? 

あたしは聞きたいと思いながら、聞けずにいた。

それどころか、あんなに綺麗に涙を流す人がいたんだと、暢気に考えていた。

放課後。

練習に顔を出した和音くんはピアノの側で、あたしたちの歌声を見守っていた。

練習の途中、音楽室の磨りガラスの窓に人影が映った。

直ぐに川元さんだと気づいた。

あたしが歌うのを中断して、合唱の列を離れると和音くんがスッと扉に歩み寄り、音をさせないように、そっと扉をあけた。

和音くんは川元さんが踵を返し、去ろうとする手首を掴むと「よよく来たな」と穏やかに微笑んだ。

音楽室を包む空気が、川元さんが入ってくるなりピリッと張りつめる。

和音くんは俯いて身を固くした川元さんの肩に優しく手を触れて、川元さんを合唱の列に誘導した。