あ、あ、あ愛してる「君に伝えたい思いをこめて」

真剣に聞いていた拓斗と奏汰の眼差しと、俺の歌に音を重ねてきた拓斗の荒削りながらも情熱的なギターの音色が、鮮明に甦った。

もう1度、LIBERTEで彼らと共に歌いたい。

湧き上がってくる思いが、俺を本気にさせる。

花音が俺の声に透き通ったソプラノを合わせる。

1年生が懸命に、俺と花音に負けじとメゾを歌っている。

今にも泣き出しそうな顔だった。

お前が俺を本気にさせたんだ、そんな顔はズルいだろうと思う。


俺と花音の声が綺麗にハモればハモるほど、1年生の歌うメゾは必死すぎて孤立していくように思えた。

独りよがりの歌がハーモニーを崩している。

三部合唱とは、もはや言えないことに花音も気づいているはずだと、花音の顔を見上げる。

俺は部員たちも勘づいているに違いないと思い、花音に目配せして、ピアノ伴奏を止めた。

「どうして?」と言いたげに俺を見つめる瞳から涙が溢れ落ちた。