あ、あ、あ愛してる「君に伝えたい思いをこめて」

「女性パートなのに歌えるって、スゴくない?」

「だって! あの人、綿貫和音でしょ!?」

「去年の県大会。和音くんの伴奏聴いた時、震えたんだーっ」

「横浜大会もすごかったよねー」

俺はざわつきを一掃するように、ピアノ伴奏しながら各パートをソプラノから順番に歌った。

尾崎は俺の側で、俺の伴奏を観ながら、楽譜に赤ペンで注意事項を書き込んでいた。

Jupiterーー惑星。

難しい選曲だなと思った。

花音から、文化祭さらには毎年恒例の市が主催する音楽祭に向けて、盆明けから練習していると聞いている。

約半月の練習で確かに纏まってきてはいる。

たが、聞かせるレベルではない。

初見のピアノ伴奏に初見で歌う俺の歌。

完成度がどうこう言う資格はないかもしれない。

それでも俺は一応バンドのボーカルだ、プロとしての自信はある。