「中、入りますか?」


照れ臭さを誤魔化すように、朝比奈に尋ねる。


「上げてくれるなら」

「どうぞ」


ドアを開け、朝比奈のことを招き入れる。

適当に座るように促し、2人分のコーヒーを入れた。

コーヒーのカップを手に、朝比奈の元へと向かう。


「どうぞ」

「サンキュー」


そして朝比奈とテーブルを挟んだところで、腰を下ろした。

何から話そう。

そんなことを思っていると、朝比奈が口を開く。


「吏斗に会えたか?」


朝比奈の言葉に、少しだけ動揺した。


「知ってたんですか?」

「美沙から聞いた」


そうだったんだ。


「あたし、ずっと吏斗のことを忘れようって・・・忘れなきゃ、ただ苦しいだけだって・・・思ってました」


あたしは吏斗に捨てられた、可哀想な女だって、被害者だって・・・