なんだか鼻の奥がツンとしたから、慌てて私は笑ってみせた。

きっと、ひどく歪んでいびつな笑顔だっただろうけど、私にはそれが精いっぱいだった。


美少女とムッシェさんが、私のへたっぴな笑顔を見てどちらともなく顔を見合わせた。

そして、二人はさっきよりも更に深い眉間の皺を浮かべる。


「もしかして、地図を見たことがなかったのかもしれませんわ」

「見たことがあったとしても、狭い範囲だけしか載っていないものかもしれない」

「どちらも文化の発達が遅れていると言われている辺境にいたのならあり得ますわね」


ふう、と美少女は息を吐き、綺麗な形の眉を八の字にさせて私に微笑んでくれた。



「ごめんなさいね、大きな声をあげて。驚いたでしょう?」


声が、柔らかくて。
優しく頭を撫でてくれた手が、温かくて。

またもや鼻がツンとしてしまい、慌ててへにゃっと笑った。


今度は、いびつな笑顔にはならなかった、と思う。

二人が優しく笑い返してくれたから。



優しい笑顔が嬉しくて、私はにこにこして自分を指差した。



『旭!』

「アサヒ?」


あ、この人も一発で言えてしまった・・・。

アクセントは微妙に違う気もするけど、発音はしっかりしていて、嬉しいんだけど自信が・・・!!!


すこーし複雑な気持ちになりながらも、美少女を指差して首を傾げた。

ムッシェさんがこそっとフォローしてくれて、美少女は花のように微笑んで名乗ってくれた。



「アイリアーナですわ!
気軽にアイナとお呼びなさいな」