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だから皆、きっと知りたくなってしまうのだ。

——色んな表情の引き出しを持つ、ハル先輩のことを。

彼のその多彩な表情の引き出しを、誰もが開けたくて堪らないのだろう。


「——これ、君のだよね?」


ふいに思い出したように、ハル先輩がこちらへと何かを差し出す。

それは昨日わたしが部室に忘れて帰った、件のマイナーバンドのCDだった。


「……あ。それっ、……探してたんですッ!!……良かった、」


受け取ったCDを見てほっと息をつく。

思い返せば、初めは所謂(いわゆる)ジャケット買いと言うやつで、何となく気に入っただけ。

正直な話、そのバンドの存在すら知らなかった。

だけどヘッドホン越しに聴いたその曲が、ドラムを始めるきっかけとまでになったのだから、人生何が起こるか分かったもんじゃない。

それにしても、こんなマイナーバンドをハル先輩も好きな事に驚いた。

自分とは、決して縁のない人だと思って居ただけに余計だ。