back number

「(……それなのに、まさかあのハル先輩に聞かれていたなんて。)」


その事実を自覚した途端、一気に恥ずかしさが込み上げる。

そんなわたしの胸の内など知る由も無いハル先輩は、さらに続けた。


「……このバンドが好きな奴なら分かると思うけど、」


と、前置きしたハル先輩は端整な顔をほころばせる。


「マイナー過ぎて知ってる奴中々居ないからさ。同士見つけたのが嬉しくて、一体誰がこのドラム叩いてるんだろって気になってたんだ」

「——、」


ハル先輩が口を開く度に、何となくこの人が女子から騒がれる理由が分かった気がした。

彼の放つ不思議なオーラは何と形容すれば良いのか。

人を惹きつけて離さない魅力とでも言うんだろうか。

華がある人とは、きっとこう言う人の事を言うのだろう。

端整な顔は一見すると冷たくも見えるけど、彼が笑うと爽やかで柔らかい印象を与える。

だけどその長い睫毛が伏せられ影を作ると、途端にその表情はどこかミステリアスなものへと変わってしまう。