ただの自惚れかもしれない。

だけど、例えそうだとしてもそれでもいい。

これだけがわたしの生涯の中で唯一の(ほまれ)かもしれない。

この世界で、ハルの才能に誰よりも最初に気付いたのは——”わたし”だと思うから。







わたしの一つ上の学年には、この学園の名物コンビとモテはやされる先輩がいた。

そういう事に、全く興味のなかったわたしでさえも知っている位だから、その人気っぷりは相当なものだと思う。

それが”ハル先輩”と”アキ先輩”だった。

いつだって女子の間で交わされる会話は、(もっぱ)ら彼らの事で持ちきりだ。

一方わたしと言えば、幽霊部員を多く抱えた名ばかりの軽音部に所属する、至って普通の高校二年生。

放課後は決まって部室にこもり、ドラムの練習に励んでいる。

部員の大半が幽霊部員にも関わらず、部室には機材等の設備が充実しているから不思議だ。

誰にも気を遣う事なく、好きなバンドの曲に合わせて気兼ねなく練習出来る所が、実は気に入っていたりする。