バスが急ブレーキなどで大きく揺れた。
そうすると、前にいた学ラン姿の人に当たってしまう。
咄嗟に謝った。
 
 
「あ、ご、ごめんなさい」
 
 
前を向いていた男はこちらを向いて言う。
 
 
「いえ。大丈夫ですか?」
 
 
その顔は笑顔に満ちていた。
 
 
「はい!」
 
 
私の言葉を聞くと、すぐに顔を前に戻したが、私はその笑顔を忘れなかった。
すぐにわかった。
 
 
 
 
 
私はこの人を好きになってしまったのだと。
 
 
きっとこれは―――
 
 
 
 
 
「ヒトメボレ」
 
 
 
 
 
今日、バスの中で私の新しい恋は始まった。