「そこだよ!」

昨日,名前も知らない男子に言われた言葉が頭を過ぎる。そのせいでいつも通り1つに束ねようとしていたのに今日は下ろしたまま学校へ来た。しかも髪ゴムを忘れて...

「最悪...」

「三橋さん?大丈夫?」


頭を抑えながら呟くと前の席の女子,綾川みつきに声を掛けられた。

「え?あ、大丈夫!気にしないで」

「そう?気分悪いなら保健室行った方がいいよ?」

「ううん、体は全然健康だから...」

「ならいいけど...あ、私先生に呼ばれてたんだった...」


綾川さんはクラスで人脈もあり誰にでも隔てなく接する為,人気者だ。さらにとても可愛いくて去年の文化祭で開催されたミス・ミスターコンテストでは2年のミスに選ばれたくらいだ。
私は勉強やスポーツを頑張っても彼女みたいにはなれない。
友達も居なければ人気にもなれっこない。
気持ちが暗い海の中に沈んでいく様な感覚に囚われてしまう。

「心梨チャン?元気ないねぇ〜どうしたの?」

「!?なっ...なんで貴方がここにいるんですか!?」

いきなり声がして声の方を見ると昨日の彼が立っていた。

「なんでって...心梨チャンに会いに?」

「...は?何いってんですか貴方...」

「なーんか心梨チャンの事気に入っちゃってさ〜♪あ、俺は2組の...」

「榎田くん...?」

彼が自己紹介をしようとした時,いつの間にか教室に戻ってきた綾川さんがその名前を出した。

「みつき...そかお前もこのクラスだったんだ...」

2人は顔を少し見合わせた後,気まずそうに目を逸らしては榎田くんが"また来るわ"そう言って教室を出ていった。