「三橋...俺と別れてくれ。」

大好きだった彼から突然告げられた別れ話、そして彼の隣には...隣のクラスの女の子。

「え?っていうかその子は?...誰?」

彼は目を逸らし

「...俺の好きな子。両想いなんだ。」

と言った。目を逸らしたのは罪悪感からなのか目を合わせようとはしない。

「両想いって...待ってよ!私は?付き合ってるのにっ」

「あ、あの」

カチンときた私が彼に言い返してると隣にいた彼女が彼と私の間に来た。

「正樹くんは悪くないの!私が...彼女居るって知ってて告白したから...正樹くんは答えてくれて...」

応えた正樹が悪いのでは?そう思ったが口には出せなかった。出せるはずがない。涙目の彼女,守られる彼氏,2人を睨みつける私。傍から見れば私は悪者だ。

「...いいわよ。もう。好きにしたら?別れればいいんでしょ?どうぞ2人でお幸せに!」

ここで去るべきかと思ったが私のこの言葉を聞くと二人はそそくさと何処かへ行ってしまった。

「...何なの...」

1人になった空間に呟き涙が溢れた。好きだった。彼...堂島正樹の事が。初カレで、初恋で、私に初めて可愛いと言ってくれた。告白したのは私からで彼も顔を赤くしてOKしてくれた。
終わりが来るなんて思いもしなかった。何もかもが初めてだった私はこの時が永遠に続くのではないかと勘違いしていた。愚かな私。

「見ーちゃった♡」

「ッ!?」

いきなり後から声がした。声の方を振り向くと茶髪にピアス,腕にはブレスレットを3つ指輪も2個...と歩く校則違反といった感じの男子生徒が立っていた。

「...誰?あなた。」

「あれ?怒こってんのー?ま、無理もないかぁ〜あんな別れ方されちゃったらね♪」

伸ばした話し方に馬鹿にするようにニヤけた顔。私の嫌いなタイプな人だ

「あなたに関係ありません。誰か存じませんが失礼極まりありませんね。」

彼氏に振られたあとこんな人にからかわれる。今日の私は最高に不憫だ。

「君,2年4組の三橋チャンでしょ?三橋心梨チャン。」

「...なんで知ってるんですか。私の名前」

「心梨って名前聞いたの初めてだし,学年1成績優秀,品行方正,そしてスポーツ万能ってね♪絵に書いたような人だねぇ〜」

「どうも。貴方に褒められたところで全く嬉しくありませんが」

「心梨チャンってさぁ...いつも髪後ろに1つ縛りだよね?偶にはイメチェンとかしないの?」

「必要ありますか?髪の毛なんて...束ねてれば...」

「そこだよ!彼が他の子を選んだ理由!」

「叩きますよ?人に指差すなって親御さんや先生から習いませんでした?」

私の言葉を聞くと人の話しを遮っては指を差してくる。この人と話しているとイライラが止まらない。

「さっきの子,可愛かったでしょ?髪の毛下ろしてるから小顔効果狙えるし髪の毛巻いてたからゆるふわ系って感じで涙流しててもあざとさが感じられない。まぁ俺からしちゃあれ嘘泣きだと思うけど」

ペラペラと人を解説しては悪口...

「私は本気で涙流してると思いますけど...嘘泣きなんて俳優や女優でも難しいっていうのに簡単にできませんよ。」

「いや、出来るよ。練習したんじゃない?」

いや。出来ねぇだろ。と思いつつも声には出さず押さえ込んだ。

「あっ...担任に呼ばれてたんだ!またね、心梨チャン♪」

そう言って手を振り走って校舎の方へ行ってしまった。
名前も知らない男子。けど彼と話してたお陰か涙はいつの間にか収まっていた。