父「千尋。誕生日おめでとう。」
母「生まれてきてくれてありがとうね?」
千「ありがとう!!!」

12月20日。とても雪が降っていた日だった。
その日私は10歳の誕生日をむかえとても幸せな気持ちだった。

私は誕生日だからわがままを言ってもいいと思い遠出したいと二人に言った。

いつも理由はよくわからなかったけど二人は遠出をさせてくれなかった。
だけど誕生日だから他県にある水族館に行ってみたかった。

千「ねえねえ!今日ねちぃね?水族館に行きたいの!〇〇県のおっきい水族館!!」
父「水族館か…しかも〇〇県…」
母「あなた、どうします?」

この時はなんで二人がこんなに考えてたのかなんて考えようともしなかった。

千「いいでしょ?だって今日ちぃの誕生日だもん!」
父「そ、うだな。よし!じゃあ今日は水族館に行こうか!」
千「やったー!パパ大好きー!」
母「あなた!本当にいいの?」
父「今日くらいいいだろ?だってちぃの誕生日だぞ?…しかも今のうちに思い出作っとかないといついなくなるかわかんないだろ…」

お父さんの最後の言葉は私には聞き取れず水族館行けるという思いで胸がいっぱいだった。


そこからお父さんが運転する車で水族館にむかった。
道中は三人で仲良く喋ったり笑ったりとても楽しくて幸せな時間だった。

でもそんな時間は長くは続かなかった。

運転しているお父さんが反対車線を見て急に焦り出してお母さんも焦り出した。
何かと思って前を向くと反対車線の車が私たちの車に突っ込んで来た。

そこからは映画のワンシーンのような光景を目の当たりにした。

車は潰れ私は何とか脱出することが出来た。
だけど私の近くの雪は赤く染まっていた。

その方向をみるとお父さんとお母さんが車の下敷きになっていた。

千「ぱ、ぱ、?ま、ま?ねえ、起きてよ…はやく出てこなきゃ、危ないよ…?」

そう問いかけても二人からは返事が返ってこなかった。

だけど二人は最後の力を振り絞って言ってくれたんだと思う。

父「お、まえ、だけはい、きろ……あ、いし、てる…」
母「し、あわせ、に、い、きて……あい、し、てる、わ……」

二人はそう伝えるとゆっくり目を閉じ動かなくなってしまった。

千「ぱ、ぱ?まま?…ヒックな、んで?お、いてか、ないで?ヒックパパ!ママ!…うわあああああああああん!!!!!!」



お葬式の時に聞いた話だけど、二人は海外マフィアの幹部だったらしい。

昔、薬に手を出したやつらを組織から追い出したら恨まれて、やめた後も日本まで付いてきたらしい。

だから遠出をすると見つかる可能性も高いし私も危険な目にあうと思ってたんだと思う。

なのに私はわがままをいって遠出なんてしたから見つかって衝突事故になってしまったらしい。