「木下先生、果菜の代わりのナースは必要ないから。先生は気にしないで。なっ」っと私に同意を求める。

私は「ハイ」と小さく返事をした。

「どうにもよくわからないけれど、水沢さんがいいと言うならいいよ。クリニックの方は藤川先生が来てくれて何とかなってるし」

「藤川先生の担当日じゃないのにですか?」

「うん、大変そうだからって大学病院を休んでくれてね」

「それなら安心です」

よかった。実はクリニックの方もかなり心配だった。
でも、藤川先生がいるのなら心配ないだろう。

「今度こそ、交渉成立。俺は寝る。果菜は着替えが届いたら適当に風呂に入れ。木田川さんももう帰っていいから」
私たちに向かってひらひらと手を振って羽毛布団をかぶった。


「・・・寝ましたね」
「寝たね」
「早いな」

私たち3人は顔を見合わせ、規則的な呼吸になっている進藤さんを残し寝室を出て隣のリビングに移動した。

大きなソファに座り、木下先生と血液検査の結果を見直し指示の確認をしていると、木田川さんがコーヒーを淹れてくれる。

よく見ればカフェにあるようなかなり高そうなコーヒーマシンが置いてある。凄いな、さすがスイートルーム。
昨夜はそんな事に気が付かないほどバタバタしていた。

木下先生が仕事の話をやめてコーヒーを飲み始めるとそれを待っていたかのように木田川さんが声をかけてきた。

「水沢さんに確認したかったんですが、貴斗とは以前からのお知り合いだったんですね?」

「ええ?そうだったの?でも、水沢さんそんな事ひと言も言ってなかったよね」
木下先生はすぐに驚いた声を出した。

「違いますよ」

木田川さんの疑問はもっともだ。
今朝からずっと進藤さんは私と知り合いであるような言い方をしていたのだから。