怒った顔も可愛いとか
愛されてるとか

怒っていたのに一瞬で顔が熱くなってしまう。

「第三者的言い方をしないとまだ外なのに俺の顔が緩みすぎるだろ」

つまいだままの右手がぎゅっと握られた。

進藤さんの顔を見ると確かにいつもより柔らかい表情をしている。

「あら、進藤さんも結婚が決まったんですか?」
他人事のように声をかけると進藤さんはふわっと笑った。

「そうなんだ。好きな女と結婚が決まって自分でも信じられないくらい浮かれてる」
とあっさり返されて私の方がはずかしくなってしまった。
ホントにズルい。

「私も大好きな人と結婚することが決まって、雲の上を歩いてるようなんです。同じですね」
とびきりの笑顔で返すと、
「やられた」と俯き髪をくしゃくしゃっとかきむしる。

えへへ、一矢報いたかな?と調子に乗っていたら「果菜、覚えてろよ」と黒さ満点の微笑みが返ってきて背筋に冷たいものが流れるような何やら嫌な予感がする。

「明日の朝日はいつもより眩しいぞ」
耳元で囁かれ全身がかぁっと熱くなる。多分顔は真っ赤だ。

朝日がいつもより眩しいって。
それっていつぞやの寝かせてもらえなかった朝に私が言った言葉。
睡眠不足の目に太陽の光が眩しくてくらくらした。睡眠不足の理由はもちろん、進藤さん。

ええっと。それは今夜も寝かせてもらえないって話ですかね?
・・・失敗した。
私のような経験値の低い者が進藤さんに対抗しようだなんて100年早かった。
それでも、素直に負けを認めるのが悔しくて、プイっと窓の方を向いた。