35階から落ちてきた恋


「毎日ホテル暮らしってのも不便だし、果菜が来ないのも困る。かといって俺が果菜の部屋に毎日いたらいろいろなところに迷惑をかけそうだし。
だから、とりあえずの緊急避難的住まいってわけ」

「でも、そこには長く住むつもりはないってことですか?」
「ああ。長く住むならもっとゆっくり時間をかけて一緒に探したいからな」
そう言って進藤さんは意味ありげに口角を少し上げる。

そっか。
そうだよね、本来ならもっとゆっくり探したいはずだ。
それにしても、もう引っ越しまで終わってるとは。
でも、あの部屋には少しだけど、私の荷物もあったはず。

「果菜が不安だろうから今度の住まいは引っ越し前にも引っ越し後にも盗聴器やカメラの類がないかも調べてくれてあるらしいし、引っ越し業者も確かなところらしいから安心していい」

まさか、私が不安にならないようにそんな事まで気を遣ってくれたとは。

「ごめんなさい。大変でしたよね」

「いや、社長がな、率先して動いたから俺は報告受けただけ。果菜のことずいぶん気に入ったらしくて」

「え、じゃあ清美さんにお礼を言わなくちゃ」

うわっ、清美さんってすごく忙しい人なのに私ったらどこまでお世話をかけてしまっているんだろう。

「ああ、新しい部屋を見たら連絡しようか」

「いえいえ、今すぐ連絡します。ちょっとお店の外で電話してきますね」
バッグを持って立ち上がろうとした私の左手を進藤さんはキュッと握ってきた。