「あの、桃城課長。よかったら今度お食事でもいかがですか?」

甲高い声と女性特有かと思われるしなり。

課長就任から早一週間。
ここ数日のガールズトイ事業部には、イケメン課長就任の噂が本社中を駆け巡り、朝から晩まで課長への女性社員の来客が殺到していた。

今日も、数名の女子グループが課長席を囲むようにやってきてはお誘い。
でもとにかく課長はほとんど口は開かない。

ここまでくると寡黙というよりは、人形と言っても過言ではない。

「まためげずにやってきてるよ、秘書課のお姉さま。懲りないねー。相手されてないのに」

美嘉が椅子を近づけてきて、私に耳打ちをしてきた。
確かに懲りないとは思うけれど、あのめげない前向きさは賞賛できる。

「まあね。でもほら数打ちゃ当たるとか」

私がそう言い返すと、美嘉は呆れたようにため息をついた。