「………ありがとう。」
私は心から大輝くんにお礼の気持ちを言葉にした。
そしたら大輝くんも応えるかのように
「どういたしまして。」と言った。
ただ、そう言っただけなのに。
『どういたしまして』と言う大輝くんの声、表情が一瞬誰かと重なった。
………誰かと、似てる……?
何か頭に引っかかり、私は考えた。
『本当にありがとう。』
『………どういたしまして。』
そのやりとりが、私の脳裏に浮かんだ。
………あっ。思い出した。
中学の時の記憶だ。
確か………その日はいつもより多く先生に仕事任されたんだっけ。
その時にクラスの男の子………いつも1人で本を読んだり勉強をしていた子が手伝ってくれたんだ。
手伝ってもらうとか、初めてで。
本当に嬉しかったから、今でも思い出せた。
男の子はあんまり目立たない子で、人と関わらないようにしているような、そんな感じだった。
常に人を寄せ付けないオーラを放ち、メガネをかけ前髪は長く目にかかるぐらいで、まるでわざと隠すように髪を伸ばしているように見えた。
みんなその人のことを嫌い、避けていたけど………
私はみんなが嫌という理由が全くわからなかった。
だってその人のこと、深く関わったこともないのに見た目で判断して。
私は悪い人じゃないって思って、一回席が近くなった時は何回か話した。
彼は素っ気なかったけど、私がわからない問題を教えてくれた時もあった。
その度に友達から
『なんで喋れるの?』と言われ、逆に『なんで喋れないの?』と聞き返してたなぁ。
「………遥?」
私の様子が変だと思ったのだろう。
大輝くんが少し心配そうに私を見ていた。
「………あっ、ごめん。なんか中学時代を思い出しちゃって。」
私がそういうと大輝くんが反応した。
「中学時代………?」