「………き、のしたくん……?」
大輝くんが掴まれた腕とは反対の腕を木下くんに掴まれ、引っ張られた。
そして大輝くんの手が私から離れる。
「おい木下。
俺は遥に用があるんだよ。」
「そうみたいだね。
だけど河野さんの表情見てわからない?
こんな悲しそうな、苦しそうなしてるんだよ?
それに彼女1人守れない大輝は河野さんのそばにいる資格、ないよ。」
「は?どういう意味だよ。」
「そのままの意味だね。だって何も知らないよね、大輝。」
「木下くん……!それ以上何も言わなくていいから……!」
昨日のことは絶対に大輝くんに知られない方がいい。
「………。」
急に黙り込んだ大輝くん。
あぁ、きっと私は傷つけてしまった。
大輝くんを……
「ごめんなさい、大輝くん……。」
今はただ、謝ることしかできなくて。
私が泣いていいはずがないのに勝手に涙がでてくる。
「………遥が幸せなら別にいい。
木下といる方が笑顔でいれるなら俺は何も言わない。
こんな俺のそばにいてくれてありがとうな、遥。」
「だ、いきくん……?」
涙で視界が歪んで見えるけれど。
確かに大輝くんは笑っていた。
きっと私が泣いているから、最後の最後まで私のためを思って………
そして大輝くんは私と木下くんの横を通り過ぎた。
終わり方はこんなにもあっけなくて。
最後まで大輝くんは優しかったんだ………。