その時、壁にもたれていた背中に手を回され、誰かに抱きしめられる。
ぼんやりとする頭の中で、その相手が誰なのかやっとわかった。
「きのした、くん……。」
「河野さん、ごめん。本当にごめん。」
ぎゅうっと腕に力を入れた木下くんはきつく私を抱きしめる。
「ダメだよ……木下くんも濡れちゃうよ……」
「今はそんなことどうでもいいから。」
今は抵抗するとかそんなことは頭になくて。
ただ、木下くんの腕の中でじっと動かずに身を任せていた。
しばらくその状態でいると、寒さで冷え切っていた体が少し温かくなってきた。
「河野さん、今から保健室に連れていくからね。」
木下くんはそう言うと私を保健室に連れていってくれた。



