これは不幸中の幸いだ。
先生ありがとう、と心の中でお礼を言う。
すると先生が木下くんを見つけたのだろう。
「……おっ、いたいた。そんな奥にいたのか。」と言う声がした。
「はい。掃除が終わったんで久しぶりに本でも読もうと思って探してたんですよ。」
「それでか。その本を借りるのか?」
「そうです。好きな作家なんで………」
頭の回転が早い木下くんはさらりと嘘をつく。
「本を読むのはいいことだからな!
俺は読まないけど………そういえば河野は?」
私の名前を呼ばれ、ビクッと体を震わせる。
「河野さんはさっきごみを捨てに行ってくれました。河野さんが戻ってきたら鍵閉めて返しますね。」
「あぁ、そうしてくれ。毎回すまんな。
今度何か2人には奢らないといけないな。」
「そんな……気にしなくていいですよ。」
なんとか私の話からそれ、ほっと安心する私だったけど………
もしこのまま先生が出ていくのを待ったとして、その後どうなるの?
またあんな状況になったら今回は奇跡的に助かったけど次はそうはいかない。



