「ちょっと待って!」

「なに」


いきなり大きな声を出して制した私に、須藤さんが眉を寄せる。


「お金は私が払いますから」

「なんで?」

「だって、私の灯油だし須藤さんに買ってもらうわけには」

「それじゃあ、お礼にならないだろ」

「あ!」


私の制止も虚しく、お金が機械に入って行ってしまう。


「18?20?」

「18リットルです…」

「あとはこれで入れればいいんだな」


須藤さんはノズルを伸ばしタンクへと突っ込む。


「すみません…お金まで払って頂くつもりはなかったのに」

「いや、灯油運んだだけじゃ俺の気が晴れないから。払わせてよ」


そう言った須藤さんの口角が少し上がる。

その淡い微笑みが、くらりとするくらい艶やかで。
私は思わず、素直にお礼を言ってしまった。