「なっ、なんで隠そうとするんですかーっ!」
「えー、だって嫉妬する天沢ちゃん、もっと見てたいし、それに。」
海水で濡れた私の髪を、耳にかける先輩の手がくすぐったくて。
嫌でもピクッと反応してしまう。
それを見て、嬉しそうな先輩の顔が悔しいけど好き。
「せっかく天沢ちゃんとデートしてるのに。
他の女の名前だすなんて、色気もなにもあったもんじゃない」
「でも、気になるし。
私ばっかりモヤモヤして、これじゃあ全然集中できない……です」
嫉妬してる暇があるなら
私だって先輩だけに集中していたいよ。
でも、大人になりきれないから
どうしてもあの女の人のことが頭から離れない。
それでも、だ。
「この話はデートが終わってからでもいいじゃん」
「……」
「正直俺は、いま天沢以外の女のことを考えてる暇なんてないんだよ」
「……」
「なあ、天沢。どっちか選べよ。
いま、この場では俺だけに集中するか
それともめちゃくちゃつまんねー他の女の話するか。」
ミア先輩はズルいから、選択肢を一つしか寄越さない。
そんなの……。
「先輩に決まってるじゃんか」


