【完】学校イチ人気者の彼は、私だけを独占したい。







「天沢、また百面相しちゃって。
 ときどき読めなくなるんだよね、天沢ちゃんの感情」



隣で体育座りをしていると
素肌に先輩の(ひじ)があたる時があって、無駄にドキドキしてしまう。



「でも、どうせ考えてることなんて、俺の事でしょ」


「……っ」


「あたり?」



私の顔を覗き込んでくる、先輩の意地悪な顔。


分かってるくせに、言わせようとしてくる先輩は卑怯(ひきょう)だ。


真っ赤になってるかもしれない熱が集中した顔を、両手で隠そうとするけど。


両手首を掴まれ、先輩のニヤニヤとした余裕ある顔が私を直視する。




「可愛いなー、天沢。
 その可愛さ、たまに本気で俺のこと殺しにかかってきてるよね」


「……っ!もうっ、誤魔化してばっかいないで、ちゃんと答えてください!あの人のこと」


「……知りたい?」



こくりと首が取れそうな勢いで頷くと。


波の音がザパーン……と聞こえてきた。



先輩が私の唇に人差し指をくっつけ、少しの沈黙で緊張感を漂わせると。



「教えない」



そう言って、不敵な笑みを見せた。