「天沢、また百面相しちゃって。
ときどき読めなくなるんだよね、天沢ちゃんの感情」
隣で体育座りをしていると
素肌に先輩の肘があたる時があって、無駄にドキドキしてしまう。
「でも、どうせ考えてることなんて、俺の事でしょ」
「……っ」
「あたり?」
私の顔を覗き込んでくる、先輩の意地悪な顔。
分かってるくせに、言わせようとしてくる先輩は卑怯だ。
真っ赤になってるかもしれない熱が集中した顔を、両手で隠そうとするけど。
両手首を掴まれ、先輩のニヤニヤとした余裕ある顔が私を直視する。
「可愛いなー、天沢。
その可愛さ、たまに本気で俺のこと殺しにかかってきてるよね」
「……っ!もうっ、誤魔化してばっかいないで、ちゃんと答えてください!あの人のこと」
「……知りたい?」
こくりと首が取れそうな勢いで頷くと。
波の音がザパーン……と聞こえてきた。
先輩が私の唇に人差し指をくっつけ、少しの沈黙で緊張感を漂わせると。
「教えない」
そう言って、不敵な笑みを見せた。


