「天沢ちゃん、行こう」
っと、女の人を無視して振り返ったミア先輩が、私の前に立つ。
「先輩、あの人」
誰なのか聞きたいのに。
私の手をとって強引に引っ張る先輩は
焦っているのか、いつものミア先輩らしくない。
気になって後ろを振り返るけど。
女の人は突っ立ったまま動かなくて、私達をジッと見ている。
先輩の方に目を戻すと、怒っているのがすぐにわかった。
「天沢ちゃん、急に俺から逃げるから。
怒ってるのかと思って、機嫌取りに焼きそば買いに行ってる間に……なに変なことに巻き込まれてるの」
パラソルまで戻ってきた瞬間に、置いてあった焼きそばを渡されたけど。
どう見ても冷めてる。
けどお腹すいてるから受け取って
渡された割り箸で食べるけど。
飲み込む麺が、うまく喉を通らない。
「先輩、あの人と知り合いなの?」
「俺の話聞いてる?
男に勝てるわけないのに。なんですぐ俺に声かけないの」
「そんな暇なかったもん。」
「そんな暇なくても呼べよ。」
「なんで?」
「なんでって……言わなくても分かるだろ。」
そんなの……言ってくれなきゃ分からないよ。
だって先輩。あの人の話、さっきから逸らしてばかりだし。
もしかして私に隠し事、やましいことでもあるんじゃないの?って疑っちゃうよ。
あんな美人相手に私が勝てるはずないんだから
疑わない方がおかしいって。
「あの場で俺が気づいたからよかったものの。
どう考えても危ない状況だったろ。
一歩間違えたら、襲われてたかもしれないだろ」
「……あの人が襲われなければ、私なんてどうなったっていいじゃん」
「……あ?」
「先輩だって、本当はそう思ってるくせに」


