パラソルの影の下。


ペロッと舌を出して、まるで(けもの)みたいに迫ってくる先輩から、へっぴり腰で逃げる。


座っていたレジャーシートからはみ出して、砂に手形がついたとき、そのまま海辺の方まで走った。



みっ、ミア先輩ってば、ほんと心臓に悪いよ……。


ミア先輩が近づく度、胸がドキドキ高鳴って
心臓がいちいちうるさい。



熱くなってるおでこに手を当てながら、パラソルの下には戻らないで歩き続ける。



ふと見てしまった夏の光景は、休みを満喫(まんきつ)する若者でいっぱいで。



鈍くなる心臓の音は、あるものに注目し始める。



「やめてください……っ!」


波の音と人の声にかき消されるその声は、ちゃんと私の耳だけには届いた。



「いいじゃーん、お姉さん暇でしょ?俺らの相手してよ~」


「美人が1人で海にいるなんて勿体ないよ~」


肌が焼けた金髪男と、サングラスをかけた髪の毛がツンツン立ってる男が

女の人の手首を掴んで、ナンパしてる……


それも無理矢理って言葉が似合うナンパの仕方だ。




「友達と来てるって言ってるでしょ!?」


弱々しい女の人の涙声は、全然男相手に通用しなくて。


逆に興奮を(あお)ってしまったのか。




「友達さっきから全然見当たらないんだけど?」


「んなことより、さっさと俺らの相手しろよ!!」



女の人なら絶対に怖がるって分かってる、男の怒鳴り声を使って。
女を従わせようとする男二人組は見ていて、とっても最低だ。