「お弁当……忘れちゃいました」



鞄の中を、何度も開け閉めしながら見たって、やっぱり入っていないお弁当箱に涙目。


あんなに気合い入れて作ったのに……。


ミア先輩を思って作ったのに。


全然かっこつかない。


分かりやすくテンションが下がる私に
ミア先輩ってばひどいんだ。


隣で肩を震わせながら笑い始める。




「フッ……ハハッ。天沢ちゃんってさ、ほんと期待裏切らないよな。
 そういうとこ、すっげえ大好きなんだけど。」


「もう!こんな時にからかわないでください!
 せっかくミア先輩のために……」



無意識に言おうとした、その言葉の続きを止める。

だってきっと、言っちゃったら。
先輩調子乗りそうだし。


でも……もう遅かったみたい。


ミア先輩は、私を包んでるタオルを取って、肩を抱き寄せる。

直接肌に触れる先輩の数本の指は冷たいはずなのに。
変に意識しちゃって、そこだけに熱が集中し始めた。


「ふーん、俺のために作ったの?」


「違います……自分のためです」


「嘘が下手だよなー、天沢ちゃんって。
 天沢ちゃんの作った弁当、食べてみたかったけど。
 この際しょうがない。天沢ちゃん自身で胃を満たすとしますか」


「えっ、ちょっ!?ミアせんぱっ……!」