「……」



しゃがみこんだまま、頬を膨らませ、分かりやすくイジけ始める私に。


ミア先輩は頭を掻いて、ため息を吐いた。


次の瞬間



「わっ……!」


私を抱きかかえると、警告もなしにそのまま海に投げた。



ーーバシャーン!!と、浅瀬(あさせ)で尻もちをつくと、飛沫(しぶき)を浴びる。


海水で濡れた上着は、もう意味をなさない。


顔を上げると、先輩の頭がちょうど太陽を隠してる。


逃げたくなった。


だって見上げた先輩の顔、笑ってるのに目が全然笑ってないんだもん。




「天沢に、1つだけ教えといてあげる」


ミア先輩の声は、海水よりも冷たい。



「俺のために可愛くなりたいとか、思ってくれてるなら、それはそれで嬉しいけど」


「……」


「これ以上可愛くなってどうすんの?」


「……っ」


「俺は今の天沢ちゃんで満足してるんだから、それ以上は求めてないよ?
 逆にどんどん可愛くなって、他の男に目つけられる方が嫌なんだけど」


「……そんな人いるわけ……っ」


「いるじゃん」


「へっ?」


「ここに」