そして昼休み。
出勤してきたばかりの望亜奈さんを捕まえ、ロッカーの隅の方に連れて行って出張の話を伝えた。

望亜奈さんはこれから仕事だから事実をそのまま伝えただけ。


「へー、良かったじゃない?」

「え?」

「だって会えるでしょ?」


でも会えるって言っても、恋人同士として会うのとは違う。
付き合ってからはじめて社内であうんだ。

だから……


「でもっ今までとは違うんですよ?」

「ま、そのへんオープンにするのかどうかは話し合ったほうがいいんじゃないのかな?」

「あ、」


そうだ。
二人で。って言われたばかりなのにまた一人で解決しようとしてた。

どうしてもこの“二人で”っていうのに慣れない。


「んじゃ、私行くね?ちゃんと話しするんだよ?」


こんな場所だし、誰に聞かれてるかわからないから気を使って主任の名前を出さなかった望亜奈さん。
こういう気づかいもしないといけない関係なんて……


「望亜奈さん、ありがとう」


ヒラヒラと手を振って望亜奈さんはロッカーを出ていった。

望亜奈さんの言うとおり、私は今日主任に電話をしてみようと思った。

そう決まれば午後の仕事のやる気も出て、午前中が嘘のように仕事が進んでいった。





仕事を終えて、家に帰りついた。
夕飯も食べ終えて、主任になんていって電話をすればいいか考えていた。


電話で話をすればいいなんて軽く思ってたけど、普段は週末にしか電話で話しをしない。
しかもいつも主任から来る電話を待っている。

一度だけ平日に主任からかかってきたけど、あれは喧嘩っぽくなっちゃった時だった。
だからこういうのって、どうなんだろう?

主任の仕事終わり時間もわからないし、私からかけてもいいの?

いつも来るメールは12時前ぐらい。
それより早く寝る場合は私からお休みメールを送るけど……


メールしてから電話していいですか?って聞けばいい?
それとも12時ちょっと前に私から電話すればいい?


たったこんなことなんだけど東京での主任の生活が見えなくて困ってしまう。
私ってこれでほんとに主任の彼女だなんて言えるのかな?


私は深くため息をついたまままた考え込んだ