お婆様との楽しいお茶の時間も、主任のおかげで青くなったり赤くなったり。

……身内の前で、ああもはっきりと言うなんて。


片づけだけお手伝いをして、部屋に戻ってきたのは1時過ぎ。


そういえば今週は主任、何の予定で帰ってきたんだっけ?


「あの、ジュンさん?今日はどこかに行く予定ですか?」

「いや、特にないけど?」


ソファに座って主任は私の指をいじりながら答える。


「えと、あの、じゃあ?」

「モモに会いに帰ってきただけですけど?」


用事じゃなくて、会いに?
まじまじと主任の顔を見つめていると


「モモとこの家で一緒にゆっくりしたいと思って帰ってきたんですけどねぇ」




『モモとこの家で一緒に』



主任のその言葉は、じんわり幸せな気持ちを体にしみ込ませていく。


「たまには、どこにも行かないでのんびり話でもするのもいいんじゃないかと」


さっきまでいじっていた手をきゅっと握り直し、


「それに、モモには体以外も知ってもらいたいですしね?」


ちょ、体以外って。

体だってそんなに知ってるわけじゃ……

いや、だからって


「そんな言い方っ」

「まぁ、日の出てる間は我慢しますから」


が、我慢って、何?

だから話をしに帰ってきたって言ってたばかりなのに。


「ずっとそうしててくれてもいいです!」

「へー?」


あ、あれ?
又なんかいやな予感。


その瞬間、離された手。
そして座っていた場所も少し距離があいたような?


「近くにいて手を出したらいけないですから。少し離れま――――」
「やっ、…です」


咄嗟に離れていこうとする主任の手を握りしめた。


だって、一緒にいるのに離れてるとか、そんなの嫌過ぎる。

こんなに会いたくて触れたくていたんだから、離さないで欲しいのに。



いつのまにか浮かべていた涙。
主任はそれをそっと拭ってくれた。


「どこにも行きませんし、嫌だって言っても離しませんから安心してください」


優しく言われて子供にするみたいに頭まで撫でられて、でもそうされることでこんなにも安らいだ気持ちになるなんて。