最悪、大きなものは潤兄にお願いしてみようかな?

あ、でも引越しの事。潤兄になんて言えばいいか……

だって契約更新の時期でもないし、しかも五分とかからない近所。

私のお給料で払えるようなマンションじゃないっていうのは潤兄だってきっと見たらわかる。

それを聞かれたら……


「そう言えば桃ちゃんって。相良さんに主任の事、言ってなかったの?」

「え?」


今まさに潤兄の事考えてたところに望亜奈さんが名前を出すからびっくりした。


「いや、この前ね。桃ちゃんの付き合ってるのって上司だった奴?ってメールが来たんだよね」


え?
潤兄はいつも朔也さんの料理教室の後迎えに来てくれていて、最後に会ったのはうちの実家でだったから……

そういえば潤兄って何でいつも迎えに来てくれてるんだっけ?


「えっ?て、言ってないの?」

「わざわざ言うような事じゃないですし……」


しかも潤兄にこの前見つかった時も恥ずかしいって思ったし。

今だって、どうやって言い訳しようかなんて考えてたし。


「一応、その上司と5月から付き合ってるって報告だけ入れといたけど」

「…そう、ですか」

「言っちゃまずかった?」


申し訳なさそうに望亜奈さんが言うから、実家に帰った時の話をすることにした。


「え?いや、この前主任が挨拶に来てくれたときに潤兄たちが突然家に来て――


「あぁだからあのメールなんだ」と、一人納得したらしい望亜奈さん。


「相良さんも主任と一緒で桃ちゃんにはかなり過保護よね」

「そう、かな?」

「なーんか似てるわ。あの二人。色んな意味でね」


二人の共通点ってどちらもモテそうぐらいしか私にはわからないけど。

色んな意味でって?


「私にはわかんないですけど……」


クスッって望亜奈さんが笑ってから携帯の時間を確認すると、


「あ、もう時間終わっちゃう。桃ちゃん帰るわよ」

「え?あ、はい」


バタバタを席を立ち私たちは事務所に戻った。